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パーソナルな関係性から派生した珠玉のコラボレーション

<EUREKA FACTORY HEIGHTS>によるコラボレーションプロジェクトをご紹介するインタビューシリーズ。今回のゲストは、アメリカンスタイルをベースに、日本のファクトリーが持つ確かな技術と上質な素材を使った服作りを行う<KAPTAIN SUNSHINE>の児島晋輔さんと、昨年<Unlikely>を立ち上げながら、その傍らで自身のレーベル<The▲Hermit Club>を手掛ける中田慎介さんのおふたり。7月20日(土)にリリースするアイテムのこと、これまでの関係、仕事に向かう姿勢など、ざっくばらんに話していただきました。


Edit & Text: Neo Iida
Photo: Naoto Date

13年来の付き合いになる、鎌倉住まいのふたり

―今日はお集まりいただきましてありがとうございます。ではちょっと乾杯から……。

児島 すみません、ワインを買って来られなくて。

中田 ビールで十分ですよ。いただきます!

ー児島さんも中田さんもお住まいが鎌倉で、ご近所同士なんですよね。かなり前からのお付き合いと聞きました。

中田 はい。もう13年くらいになるのかな。僕は当時鎌倉に住み始めたばっかりで、児島さんも湘南に住んでいたから、種市(暁)さんが「きっと趣味が合うから」って紹介してくれたんです。その頃はサーフィンもちょっと嗜んでいたので、一緒に行くようになって。それ以来仲良くさせてもらっています。

児島 確かまだ中田さんが<BEAMS PLUS>(以下<PLUS>)にいた頃ですよね。

中田 そうですね。その頃、児島さんは<Waste (twice)>のデザイナーをされていて、僕が在籍していた<PLUS>でも1〜2シーズン扱わせてもらったんです。そのあとすぐ独立されて<KAPTAIN SUNSHINE>が誕生したので、早速コラボのオファーをさせてもらいました。僕としてはブランドスタート時に応援できたらという気持ちだったんですけど、もしかしたらそれが足かせになったかも……。

児島 そんなわけないじゃないですか(笑)。ありがとうございます。

ーじゃあ、お仕事上の付き合いもかなり長いんですね。

中田 いや、僕はそのあとすぐ<PLUS>から別の部署に移動になって、あとはチームのみんなが引き継いでくれたので、直接やり取りする機会はなかったんです。プライベートのお付き合いはずっとありましたよ。なんといっても<The▲Hermit Club>のアンバサダーなので、出来上がったらまずサンプルをお渡しして。

児島 最初に中田さんから<The▲Hermit Club>を始めると聞いたとき、めちゃめちゃ新しいなと思いました。しかも「ぽい」なあと。

<The▲Hermit Club>のスタンスは、“ヤドカリ”

ー立ち上げたのはいつ頃なんですか?

中田 独立する前、2021年ですね。<BEAMS>時代に副業としてスタートしたブランドです。好きなブランドの個人的に好きなアイテムに、自分のアイデアを入れさせてもらってリリースする。基本はどこかの宿を借りて運営するという、乗っかり企画なんです(笑)。だから名前の由来は「hermit crab(=ヤドカリ)」。その「crab」をクラブ活動の「club」に変えて、<The▲Hermit Club>と名付けました。少しずつやれたらいいなと思って始めたら、何気に3年ぐらい続いていますね。

児島 <SCYE BASICS>とはデニム、<LOOPWHEELER>とはスウェットと、いろんなブランドと一緒にコラボしてますけど、それって信頼関係がないと受けてくれないと思うんです。それは中田さんが今まで培ってきたもの。企画力もあるし、それをちゃんと形にできるところが流石だなと思います。

中田 いやいや。もちろん児島さんともいつか……とは思っていたんです。でも<PLUS>のみんなが児島さんといい関係を築いているわけで、僕は卒業生。だから会社にいた時も独立してからも、すぐに何かやるっていうのは考えていませんでした。今は独立して少し経って、余裕も出てきて。ちょうどいいタイミングで小林さんからお話をいただけたなあと。

ー僕も<The▲Hermit Club>のバケットハットを愛用していて、うちの店でも何かできないかなと思ってたんです。色々考えていたとき、児島さんと中田さんがコラボをした記憶がなかったので、一緒にやりませんかと声をかけたのが今回のきっかけですね。

児島 一緒にご飯を食べながら、さらっとね。小林くんとは前職からの付き合いなんですけど、昔から顔が広くて、すごく物知りなんですよ。フットワークが軽いし、日本でも世界でもどこにでも行く。東京の飲食店のことも小林くんに聞くぐらい信頼を置いているんです。よく一緒に飲んだりして。

ー僕に中田さんを紹介してくれたのも児島さんですからね。鎌倉にある『オイチイチ』という不定期営業のバーに一緒に行ったとき、ちょうど中田さんもいらしていたんですよね。

児島 そうそう。小林くんの店ではずっと<KAPTAIN SUNSHINE>を扱ってくれているし、コラボするならうちのTシャツのボディを使うのはどうかなと提案したんです。

<KAPTAIN SUNSHINE>の定番Tシャツを使った初のコラボ

ー<The▲Hermit Club>といえば<PRO CLUB>のTシャツ、というイメージがありますから、<KAPTAIN SUNSHINE>のボディにするっていうのはかなり面白いなと思いました。

中田 これがまた、めちゃくちゃ素晴らしいTシャツなんですよ。自分も2年ぐらい前に着て、感動しました。滑らかで着心地も良くて、すっかり大事な日に着るTシャツになってます。だから今回「どうですか?」って言われたとき、えっいいんですか! って。

児島 うちの服作りは、まず素材作りから始まるんです。この定番のチューブTシャツ(Suvin Supima Tube Tee)は逆転の発想で作っていて、インドの希少なスビンコットンと、アメリカのスーピマコットン、ふたつの超長綿(繊維の長さが35mm以上ある長い綿のこと)同士を掛け合わせて、特殊な撚糸回数(1mあたり何回転をかけたかを表す数)で渾身の生地を作り、時間をかけてゆっくり丸胴の形状に編んだもの。つまりリッチな超長綿で、形はアメリカの往年のボディを再現しているんです。そういう意味でも、<The▲Hermit Club>のボディとして使ってもらうのは、いろんな意味ですごく合っているなと。

中田 <PRO CLUB>のTシャツの最上級を作ったらどうなるのか、みたいな一着になった気がしますね。

―すごくわかります。でも、そもそも中田さんはどうしてボディに<PRO CLUB>を選ばれたんですか?

中田 目の詰まった感じとか、首周りの太さとか、タフさとか、普通に大好きでよく着てたんです。でもハンガー干しするとネックが伸びるじゃないですか。あれが嫌で、じゃあ両端に紐を付けて引っ掛けて干せるようにしようと。それが始まりで、紐を付けることが徐々にブランドのアイコンにもなっていったんです。

児島 今回も紐はちゃんと付いてます。ボディの形状は定番のチューブTと変わらないですが、サイドに紐とロゴが入っている。あと、その下に長いアンダーバーを入れました。<KAPTAIN SUNSHINE>でたまに使うことがあるモチーフです。

中田 さりげないけど、ちゃんとアイコンになっているのがいいですね。

児島 このボディを使ったコラボレーションって今までやったことがないんです。でも小林くんはずっとうちの服を扱ってくれているし、一緒にやるのは中田さんだし、いろんなことがうまく噛み合いましたね。

ーチューブTはうちの店でも人気ですから。今回、カラーもオリジナルなんですよね。

児島 そうです。<PRO CLUB>のネイビーから色出しして、今回の企画用に作りました。

中田 <PRO CLUB>のネイビーって、“ザ・アメリカ代表”みたいな色をしてるんですよね。ちょっとグレイッシュで、言葉で言い表せない色。いわゆる日本で流通しているネイビーの服と合わせようかなと思うと、なんかちょっと違うんですよ。

ーわかります。クローゼットにしまうときにいつも思いますね。ダークネイビーでもない、あの独特な色合いが何ともいえなくて。そして、ふたつめのアイテムはハットです。

ネイビーで統一した、バケットハットとサコッシュ

中田 いちばんはじめに児島さんと「<KAPTAIN SUNSHINE>と<The▲Hermit Club>のネタを提供し合ってひとつのコレクションを作れたら面白いよね」っていう話をしたので、小物周りは僕が担当して、Tシャツは児島さんが担当する流れができたんです。バケットハットも前から大好きで、もう何回か作っているアイテム。今回は別注としてネイビーで作りました。

―ハットにもちゃんと紐が付いているのが特徴です。そしてサコッシュですね。

中田 はい。以前から新作として作っていたもので、このあと<The▲Hermit Club>でも別のカラーをリリースする予定です。ネイビーはエウレカさんだけの限定カラーですね。

ー巾着にもなるという。確か以前もこういう形が変わるバッグを作っていましたよね。

中田 はい。最初の頃、コンビニの手提袋になるちっちゃい巾着を作りました。ちょうどコロナ禍でビニール袋が廃止になった頃ですね。それから時間が経って、改めてフェスで使えるサブバックがあったらなあと思って、<STANDARD SUPPLY>に依頼をしたんです。

ー先日、この巾着のサンプルを持ってベトナム旅行に行ったんですよ。コードが細いから食い込むかなと思いきや全然大丈夫でした。結構しっかりしてますね。

中田 このコード、実はコロナ禍の名残りというか、マスク用のコードなんです。それを付けてショルダーにしてる。あと「ビアショルダー」っていう名前をつけていて、内側にスリットがあって、要はビールが2本入るんです。フェスでビールを買うのって、並ぶし、暑いし、大変じゃないですか。あー、あと1本飲みたかった! というときのために、余分に入れておけたらいいなと。

ーくるくるっと小さくして、首から下げられるのがいいですね。

中田 こういう小ワザが好きなんです(笑)。

それぞれが感じる、お互いの“らしさ”

ー今回、ご一緒に服作りをされてみてどうでした?

児島 やっぱり超アイデアマンだなと思いましたね。ひっくり返したらこうなって、さらに小袋に物が入って……みたいな、細かい仕掛けをたくさん入れるじゃないですか。僕もデザインをするわけですけど、なかなかここまで詰めるのって難しいんですよ。中田さんの仕事って、BEAMS時代からそうですけど、必ずそういう緻密な「らしさ」が見え隠れするんです。そういう細やかさはすごいなと思いますし、尊敬していますね。クライアント仕事もきちんとこなすし、けど<Unlikely>はやりたい放題。そのスタンスがすごいなって。

中田 そんなこと言ったら、児島さんのほうがめちゃくちゃ完成されてますよ。その時々で変化するところもありながら、軸は変わってない。そのスタンスを保ちながら10年続けるってすごいことだなと思います。それに、いつのシーズンのどのアイテムにも、<KAPTAIN SUNSHINE>らしさがちゃんと感じられる。作るものに色気があるなあといつも思いますね。

児島 好きなものは確かに変わらないですね。横の広がりは当然ありますけど、自分の好きなものってなかなか変えられない。なので、やりたいことをやるというより、できることを精一杯やることなのかなと思いますね。常にヒイヒイ言いながらやってます(笑)。

―中田さんは<The▲Hermit Club>で色々なブランドとコラボレーションをされていますけど、その際の基準みたいなものはお持ちなんですか?

中田 うーん、トレンドとか、今こことやると話題になるよね、みたいな考え方ではないですね。自分から新しいブランドにアプローチすることは基本的にはないです。40歳を超えたぐらいから、自分が本当にリスペクトする人たちと仕事をするのが本来の意味でのコラボレーションなんじゃないかなと思うようになって。なので、まず付き合いがあって、自分では絶対できないと思う部分があるとか、過去に助けてもらったことがあるとか、その関係性を大事にしたいなと思っています。

ーおふたりとも展示会シーズンが終わると、また次のコレクションに意識が向いていくわけですよね。児島さんは素材のことまで考えられるわけで、構想にはかなり時間をかけられるわけですか?

児島 そうですね。いつも長いスパンで動いています。

中田 もう冬の素材も進行中ですか?

児島 いやいや、今からです。

中田 僕も次の〈Unlikely〉のコレクションのこと、何にも考えられていないです。ヤバいなあ……。

児島 本当ですか? 回りにはそう言っておくっていう作戦なんじゃないですか?

中田 期末テストで「俺やってない」とか言って実はめっちゃ家で勉強してきたヤツみたいな? そんなことないですよ!(笑)

児島 (笑)。

ーこれからの展開も楽しみです! 今日はありがとうございました。


Profile

児島晋輔
こじま・しんすけ|<KAPTAIN SUNSHINE>デザイナー。 1976年、兵庫県生まれ。 メンズファッション誌の編集者を経て、メンズブランドのデザイナーへと転身。2013年より自身のブランド<KAPTAIN SUNSHINE>をスタートさせる。

中田慎介
なかだ・しんすけ|〈Unlikely〉デザイナー。1977年、栃木県生まれ。2000年に『BEAMS PLUS 原宿店』のオープニングスタッフとして入社。〈BEAMS PLUS〉のディレクター、〈BEAMS〉のチーフバイヤー、メンズカジュアルのディレクターを経て、2023年に独立。〈Unlikely〉を立ち上げる。

 

KAPTAIN SUNSHINE for The▲Hermit Club
Suvin Supima Tube Tee Heavy w “In&Out”
Navy/White
15,400円(Tax in)

The▲Hermit Club for KAPTAIN SUNSHINE
Member’s Hat -twill-
Navy
8,800円(Tax in)

STANDARD SUPPLY for The▲Hermit Club
BEER SHOULDER POUCH
Navy
8,800円(Tax in)

こちらの商品は7月20日11時より店頭にて販売いたします。
オンライン販売の予定は現在ございません。
ぞれぞれの商品につきまして、お一人様一点ずつのご購入とさせていただきます。
また当日お並びいただいた場合には入店の制限を設けさせていただく可能性がございます。
予めご理解のほどよろしくお願い致します。